翌朝の光は、カーテンの隙間から机の上へ細い線を落としていた。宏明はコーヒーの湯気を横目に、昨夜のメモ帳を開く。タイトルを整える、説明文を直す、見出しを分かりやすくする。その三つの言葉が、眠気の残る頭でもはっきり読めた。 「よし。今日は文章そのものを触る」 独り言にしては少し大きかったが、静かな部屋にはちょうどいい。宏明は古い記事をひとつ開き、冒頭を見つめた。書きたいことは残っているのに、言い回しが回りくどい。好きな表現を詰め込みすぎて、入口が狭くなっていた。 「ここ、もう少し短くできるな」 削るのは怖い。だが、削ることで伝わることもある。宏明は一文を半分にし、長い説明を別の言い方に置き換えた。すると、画面の上で文章の輪郭が少しずつ立ち上がってくる。 「検索で拾われやすい言葉は入れたい。でも、無理に詰め込むと味が死ぬ」 指先が止まる。宏明は声に出して確かめるように続けた。 「たとえば、作品の内容が分かる言葉。読んだ人が何を得るかが見える言葉。そういうのを自然に混ぜる」 見出しも同じだった。曖昧な題を、少しだけ具体的にする。けれど、説明しすぎない。興味を失わせない距離を探す。宏明は何度も打ち直し、変えた文を読み返しては首を傾げた。 「これだと堅いか。いや、こっちは軽すぎる」 画面に並ぶ文字列は、まるで並べ替え前の積み木みたいだった。ひとつ動かすたび、別の部分が崩れそうになる。それでも、手を止めなければ形は整っていく。 休憩のつもりで背を伸ばした宏明は、ふと思い出したようにブラウザを開いた。helpindex.org。前に気になっていた情報整理のサイトだ。派手さはないが、どう案内すれば伝わるかのヒントがありそうだった。 「メモだけ残しておくか」 相談というほど大げさではない。だが、考えを外へ置いておくと、あとで見返したときに整理しやすい。宏明は簡潔な言葉で、見せ方と導線をどう考えるべきかを書き留めた。 「これで、ただの独り言じゃなくなる」 送信を終えると、部屋の静けさが少しだけ変わった気がした。机の上には、短くなった文章と、まだ途中の見出しが並んでいる。宏明は画面を見つめ、深く息を吸った。 「よし。内容は残す。伝わり方だけ、もっと良くする」 そう言って、彼はまた古い記事の編集画面に戻った。
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