エラベノベル堂

物語を届ける紹介文

全年齢

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3章 / 全10

昼下がりの光が、作業部屋のカーテンの隙間から斜めに差し込んでいた。朝陽は椅子に深く座り、古い投稿の一覧を開く。昨日のメモを頼りに、ひとつずつ手を入れていく作業だ。 「よし、まずは説明を短くする」 独り言を言いながら、朝陽は作品ごとの紹介文を読み返した。長く書きすぎた一文を削り、要点だけを残す。どんな話か、誰に向いているか、すぐに伝わるように。頭の中では理屈が正しいのに、画面の上に並ぶ文字はどこか無難で、味気なかった。 「……きれいすぎるな」 投稿欄を見つめたまま、朝陽は眉をひそめる。整ってはいる。けれど、まるで説明書みたいだ。作品を読む前のわくわくが、言葉の隙間から抜け落ちている気がした。 それでも、手は止めない。古い記事を整理し、ページの並びを見直し、作品の入口になる文を差し替えていく。画面の端で保存完了の表示が点いては消えた。 「これで、少しは分かりやすくなったはず」 更新を終えた朝陽は、期待と不安の入り混じった気持ちでサイトを確認する。見た目は悪くない。前より迷いにくくなったはずだ。そう思って、数回リロードしてみる。 だが、反応は鈍いままだった。通知は静かで、アクセス数の数字もほとんど動かない。 「……あれ?」 声が小さく落ちる。ここまでやったのに、世界は思ったほど揺れなかった。 朝陽は背もたれに体を預け、天井を見上げる。努力はしている。ちゃんと改善もしている。なのに、何かがずれている感覚だけが残る。 「地道に直したのに、まだ足りないのか」 悔しさというより、空回りした輪が手の中で冷えていく感じだった。作品へ向かう道を整えたつもりで、実際にはただ看板を磨いただけなのかもしれない。そんな思いが、静かに胸へ沈む。 朝陽は再び画面に向き直った。整えた文章は間違っていない。けれど、そこには今ひとつ、読んでみたいと思わせる熱がなかった。更新の完了通知を閉じても、部屋の空気はまだ重いままだった。 「空回り、か……」 呟いた声は、キーボードの上に落ちて消えた。けれど朝陽は、その失敗を見なかったことにはしなかった。

3章 / 全10

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