深夜の部屋は、昼間よりずっと静かだった。冷えた空気の中で、朝陽はキーボードの前に座り直し、蒼に言われた言葉を何度も頭の中で転がした。 分かりやすさだけじゃだめ。気になる感じも必要。 「……つまり、入口を整えるだけじゃ足りないってことか」 独り言をこぼして、朝陽は画面を見つめる。さっきまでの紹介文は、たしかに整っていた。けれど、どれも説明に寄りすぎていて、読み手の胸を少しでも揺らす温度がなかった。そこで朝陽は、言い切る文章をやめた。作品のあらすじを並べる代わりに、最初の一歩を踏み出したくなるような語り口へ置き換えていく。 「これは、誰かの夜を変える話……いや、ちょっと大げさか」 自分で書いて、自分で首をひねる。だが、引っ込めるのではなく、言い回しを少し柔らかくした。作品ごとの説明には、読む前の空気が漂うように。読者がページを開いたとき、いきなり説明文を読まされるのではなく、物語の入口に立っていると感じられるように。 朝陽は何度も保存し、何度も戻した。短くすれば乾き、飾れば遠回りになる。ちょうどいい案内の温度を探しながら、最後にサイト全体の導線をまとめていく。どこを見れば作品一覧があり、どこから読み始めればいいのか。迷いそうな場所をひとつずつ拾い上げ、一本の道に整えていく。 「トップから、案内、作品一覧、各話の入口……これで、辿れるはずだ」 画面の上で並び替えられた文字を眺め、朝陽は小さく息を吐いた。まだ足りない気もする。けれど、足りなさを抱えたまま止まるより、読者の目線で入口を整え切るほうが先だ。 公開ボタンの手前で、指が一度だけ止まる。 「よし」 朝陽は短く言って、更新を確定した。静かな深夜、erabenovel.comの案内はひとつにまとまり、作品へ向かう道筋は前よりもはっきりした。だが胸の奥には、整えたはずなのにまだ埋まらない小さな隙間が、ひっそりと残っていた。
物語を届ける紹介文
全年齢小説ID: cmsoz5hc0000o01pc60f0tteo
