夕暮れの車内は、窓に流れる街の灯りでゆっくり色を変えていた。朝陽は吊り革を握ったまま、スマートフォンの画面を見つめる。検索結果に自分のサイトが出る。それは嬉しい。けれど、その横に出ている説明を読み直した瞬間、胸の奥がひやりとした。 「……違う」 小さく漏れた声は、電車の揺れに飲まれた。表示名は悪くない。だが、その言葉だけでは作品の顔になりきれていない。説明文が、作品の核心を少しだけ外している。そう気づいた途端、今まで直してきたものが、急に薄い膜みたいに思えた。 朝陽は画面を拡大して、何度も読み返す。 「見つけてもらうために整えたのに、肝心の中身がずれてたら意味ないじゃないか……」 言葉にしてみると、答えは意外なほど単純だった。タイトルは目を留めさせるための旗印で、説明は中へ進んでもらうための橋だ。どちらか一方だけでは足りない。旗印が強すぎれば、作品の空気が消える。橋が長すぎれば、誰も渡ってこない。 朝陽は膝の上の紙袋を抱え直し、息を整える。 「なら、作り直すしかないか」 すぐに全部を変えるのではない。作品の持つ温度を残したまま、余計な言葉を削る。読む前に想像が広がる程度に、けれど誤解しない程度に。朝陽は頭の中で、説明文の文節をひとつずつ入れ替え始めた。何度も迷って、何度も戻る。それでも、迷いが消えないからこそ、作品の芯に触れている気がした。 車窓の外で、駅の明かりがいくつも過ぎていく。 「作品の核心を損なわない範囲で、か……」 つぶやいた朝陽の指先に、ようやく力が戻る。言葉を飾るのではなく、研ぐ。削るたびに輪郭が浮かぶなら、それが正しいやり方だ。朝陽はスマートフォンのメモ欄を開き、新しい表現を打ち込もうとして、ふと画面の光を見つめた。 まだ完成ではない。けれど、次に何を直すべきかは、はっきりした。 「よし。帰ったら、全部並べ直す」 電車が次の駅へ滑り込む。朝陽はその揺れの中で、静かに決意を固めた。
物語を届ける紹介文
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