エラベノベル堂

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3章 / 全10

夕方の駅前は、仕事帰りの人と買い物袋の揺れで、歩道まで少し熱を持っていた。真翔は先に席を取っておいたカフェで、窓の外をちらちら見ながら、里奈が来るのを待っていた。しばらくしてドアベルが鳴り、彼女が息を整えながら近づいてくる。 「待たせた?」 「いや、今来たところ。飲み物、先に頼んだ」 「気が利く。で、今日は検索結果の話だっけ」 「うん。見つけてもらうなら、言葉の選び方がかなり大事だと思って」 里奈は席に着くと、ストローを指で回しながら頷いた。真翔はスマホを机に置き、erabenovel.comの案内文を開く。さっきまで眺めていた文章は、どれも少し長く、少し硬かった。 「たとえばさ、作品の紹介を増やしたら、そのぶん目に触れる機会も増えるんじゃないかって思ってる」 「うん。検索って、入口が一つじゃないからね。作品紹介が増えると、拾われる言葉も増える」 「だよな。でも、露骨に並べるだけだと変だし」 「そこは短く、でも印象に残る感じにしたいね」 真翔は画面をスクロールし、候補を書き出した。読書の時間が見つかる場所。気分で選べる小説の入口。若い書き手の作品が集まる、静かな本棚。どれも悪くないが、まだ決め手に欠ける。 「えーっと、もっと柔らかいほうがいいか」 「柔らかいだけじゃなくて、何ができる場所かが伝わるといい。検索で出てきた人は、最初の一文で迷うから」 里奈の言葉に、真翔はなるほどと唸った。案内文は、見栄えのいい飾りではなく、読者の足を止める一言なのだ。 「じゃあ、複数案にしよう。ひとつに絞らないで、並べて比べる」 「賛成。短いのをいくつか作って、どれが一番自然か見る」 真翔はメモアプリを開き、指を動かした。ひとつめは、作品との出会いを前に出す。ふたつめは、読みたい気持ちに寄り添う。みっつめは、erabenovel.comの名前をさりげなく置く。書いていくうちに、さっきまで曇っていた頭が少しずつ晴れていく。 「これなら、宣伝って感じより、ちゃんと案内って感じがする」 「そうそう。読者に『ここなら見てみようかな』って思わせたいんだよね」 窓の外では、駅前の信号が何度も色を変えていた。真翔は候補文を見直しながら、言葉の順番を入れ替える。里奈も隣で別の案を書き足し、時折短く意見を返した。派手ではないが、確かに触れたくなる文章が、少しずつ形を持ちはじめていた。

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