エラベノベル堂

静かに広がる投稿サイト

全年齢

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8章 / 全10

電車の揺れに合わせて、スマホの画面が小さく傾いた。窓に映る自分の顔は、さっきまで会議室で受けた熱をまだ引きずっているみたいに固い。真翔は指先で一覧をスクロールし、erabenovel.comに並ぶ作品を一つずつ見直した。 「……弱いな」 つぶやきは、車内のざわめきにすぐ溶けた。それでも、自分の耳にははっきり残る。検索対策だ、案内だ、補助ページだと外側ばかりを磨いてきたけれど、最初に読まれる一話目がこのままでは、せっかく来た人の足を止められない。 画面を開いたまま、真翔は次の作品へ指を送る。紹介文が長い。導入が遅い。読者が知りたい気配より先に、説明の息苦しさが立っている。別の作品も、言葉は整っているのに掴みが薄い。並べてみると、どれも悪くはない。だが、最初の一歩としては弱い。 「見つけてもらう前に、読ませないと意味がないか」 口にした瞬間、胸の奥で何かが静かにほどけた。今日まで、検索で目に留まる言い方ばかり考えていた。けれど、騒ぎになった今だからこそわかった。入口を増やすことと、作品の力を上げることは別だ。むしろ後者がなければ、入口はすぐにただの看板になる。 向かいの席の学生らしい二人が、週末の予定を笑い合っている。真翔はその声を聞きながら、スマホの一覧をもう一度上へ戻した。最初に開かれる一話目。そこで心を掴めなければ、どんな案内も役に立たない。 「騒ぎになったからこそ、だよな」 検索で拾われることが目的じゃない。読者が読んで、続きを知りたくなること。その中身が勝負だ。真翔は親指を止め、画面を見つめたまま深く息を吐く。もう迷わない、と腹の底で決める。 車内アナウンスが、次の停車駅を告げた。ドアの近くで誰かが立ち上がり、空気が少しだけ動く。真翔はスマホを握り直し、作品一覧の一番上を見つめた。最初の一話目を変えなければ、すべては始まらない。

8章 / 全10

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