エラベノベル堂

つながりを残すデータ

全年齢

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第2章 / 全10章

俺は受信箱を閉じたまま、しばらく画面の前で指を止めていた。朝のざわつきはまだ完全には引かない。それでも、立ち止まってばかりはいられないと、椅子を引いてデスクに身を寄せる。 ログイン画面の先にある一覧は、いつもならただの業務用の海だ。けれど今は違う。FreeB2BDataの規模が、数字として目の前に突きつけられていた。二百五十二か国、三千三百万社以上。桁が大きすぎて、実感より先に焦りが来る。 「こんなの、全部眺めてる時間ないぞ……」 思わず独り言が漏れる。隣の席はまだ静かで、午前の空気だけが薄く流れていた。 必要なのは、全部ではない。今すぐ業務に使う企業リスト、営業が次に動ける連絡先、そして消えてしまうと困る記録。そこに、社内で共有すべきものと、俺の手元でまず確保しておくべきものを分けなければならない。 画面をスクロールしながら、俺は頭の中で箱を作った。今月の案件に関わる取引先。まだ返事待ちの相手。過去に一度だけ接点があった会社。会社全体に配るべきのは、名前と所在と更新の跡。個人で持ち帰るべきなのは、相手の連絡経路や、次の一手につながる細かな手がかりだ。 「営業向け、調査向け、バックアップ用……いや、まずは優先順位だな」 口に出してみると、少しだけ輪郭ができる。どれも大事だが、同じ箱に入れていいわけじゃない。期限までに確保するためには、先に掴む順番を決めるしかない。 俺はメモ帳を開き、最低限残すべき企業名の条件を書き出した。今動いている相手、過去に縁があった相手、そして社内で共有する価値が高い相手。見落としを減らすために、同じ会社名でも表記違いがありそうなものは後でまとめて確認する。 画面の中の膨大な件数が、さっきよりも少しだけ人の姿に見えてきた。数ではなく、使い道で切り分ける。そうしなければ、この猶予はあっという間に砂になる。 俺はマウスを握り直し、最初に抽出する条件へカーソルを合わせた。

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