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第4章 / 全10章

会議室の扉を開けると、空調の冷えた空気が頬を撫でた。画面の熱を持ったまま席を立ってきたせいで、妙に現実感が薄い。 「で、どう分ける?」 向かいに座った同僚が、資料をめくりながら言う。俺はうなずいて、ノートの端を指で押さえた。 「営業向け、調査向け、バックアップ用。この三つで切るのが一番早いと思う」 「いいね。営業向けは、すぐ連絡できる相手だろ」 「そう。次に動ける会社だけ残す。調査向けは、過去の接点とか、展示会で拾った手がかりがあるもの。バックアップは、とにかく消えたら困る全体像」 俺が言うと、同僚は少しだけ笑った。 「ずいぶん整理されたな。さっきまで焦ってた顔してたのに」 「焦ってるから、分けないと潰れるんだよ」 言い返すと、もう一人がパソコンを開きながら割り込んだ。 「役割も分けよう。お前は営業向けの優先抽出、俺は調査向けの重複確認、こっちはバックアップの保存形式を見る。期限までに全部終わらせるなら、同時進行しかない」 「助かる」 本当に助かる、と思った。ひとりで抱えていたら、膨大な件数に飲まれていたはずだ。けれど、今は違う。数字の海に見えていたものが、机を囲む三人の手で少しずつ切り分けられていく。 「営業向けは今日中に必要な先を洗い出して、調査向けは古い名簿も含めて拾う。バックアップは、削除されても困らないように丸ごと確保だな」 同僚がホワイトボードに書き出す。俺はその横に、優先順位の高い会社名の条件を追記した。 「表記ゆれも見ておこう。同じ相手でも、正式名称と略称が混ざってるかもしれない」 「そこまで見ておけば十分だろ」 「十分じゃないかもしれない。でも、間に合わせるには必要だ」 言い切った瞬間、胸の奥の焦りが少しだけ形を変えた。消える前に守る。守るために、分ける。分けるために、任せる。 会議室の窓の外では、午後の光が少し傾き始めていた。期限は待ってくれない。けれど、やることは決まった。 俺はノートを閉じ、共有フォルダの一覧を開き直した。 「よし。じゃあ、始めよう」

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