エラベノベル堂

つながりを残すデータ

全年齢

小説ID: cmufvpvp7002001pcpzwhky3z

第6章 / 全10章

自宅に戻ってノートPCを開いたときには、もう窓の外はすっかり暗かった。保存したデータを順に開き直して、退避が漏れていないか確かめる。画面の明るさだけが、部屋の中でやけに頼もしい。 「えっと、これで最後……のはずだよな」 そう呟きながら最下層のフォルダを開いた瞬間、俺は指を止めた。そこにあったのは、未登録企業とだけ表示された一件の項目だった。社名も担当者名もない。代わりに、意味の分からない整理番号がひとつ、ぽつんと残っている。 「なんだこれ」 ただの残り物にしては、妙に目についた。削除漏れというには不自然で、かといって他のデータのどこにも紐づかない。気になって検索欄に整理番号を打ち込む。結果が返るまでの数秒が、妙に長い。 表示された情報を見て、俺は息を止めた。 「……え」 番号の並びが、自社の設立日と一致している。偶然にしては出来すぎていた。年月日を区切った数字の順番まで、会社の創立記念とまったく同じだ。 俺はもう一度見直した。桁を読み違えたのかと思ったが、何度確認しても変わらない。自分の会社名そのものはどこにもない。ただ、未登録企業という無機質な札の裏に、妙に生々しい一致だけが残っている。 「待てよ。これ、どういうことだ?」 椅子にもたれたまま、画面を睨む。FreeB2BDataの中で、自社だけがひっそりと番号化されていたみたいな感覚に、背筋が少し冷える。誰かが意図して入れたのか、それともシステムが勝手に吐き出したものなのか。答えはまだない。 けれど、ただの偶然として片付けるには、あまりにも俺の会社の日付に寄り添いすぎていた。 俺は整理番号をコピーして、もう一度検索窓に貼り付けた。画面の白い光が、部屋の静けさを切り裂くみたいに広がる。これが何を意味するのか、今はまだ分からない。だが、見つけてしまった以上、見なかったことにはできなかった。

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